前置き
- この育成論はさかさバトルを前提としています。
- 考察は常態で記述します。
- 非公式の略称、当て字を用います。
- 個体値は指定が無い限りすべて6Vとします。
コンセプト
主目的はさかさバトルにおけるオニゴーリ入りパーティへのメタ。
残念ながら1体でパーティ全てに対応できる程のスペックは持ち合わせていないが、メガガルーラ対策枠やスカーフメタモン等の後続と併せ、多くのオニゴーリ入りパーティに対応する。
カイリュー、キノガッサ、ラティオス等の使用率が高いポケモンに対面有利であることから、汎用高速ATとしても運用出来る。
さかさバトル
さかさバトルとは、XYシーズン4及びORASシーズン10でのスペシャルレートにて採用されている特別な対戦ルールのこと。
さかさバトルのルールをよく知らないという方のために、この項で簡単に説明する。
大部分は通常のシングルバトルと同様だが、唯一の違いはタイプ相性が反転する点。
抜群が半減、半減が抜群、無効も抜群となる。よって無効耐性は存在しない。
- 相性はタイプごとに判定
例えば、通常では炎・飛行タイプは地面無効だが、反転して抜群ということにはならない。
地面⇒炎の抜群が半減、地面⇒飛行の無効が抜群となるため、さかさバトルにおいては等倍である。
- 特性は通常通り
浮遊、草食などの無効化特性、厚い脂肪などの半減特性は通常どおりの効果を発揮する。
また草タイプの粉技耐性、電気タイプの麻痺耐性等についても同様である。
これらの内容から、さかさバトルにおける特徴として全体的に耐性の減少、弱点の増加に伴う攻撃技の一貫性向上が挙げられる。
先述の通り全てのタイプが(特性以外で)無効化されなくなり、特にノーマル技は半減できるポケモンがいない。
この点から、通常ルール以上にメガガルーラが猛威を奮っている。増田ァ!
メガガルーラ以外にはポリゴン2やクレセリアなどの数値受け、ミルタンクやゴーゴートといった無効耐性持ち(特に草食)が通常より数を増やす傾向にある。
また同タイプで抜群を取り合うケースが非常に多く(水電草炎氷毒超鋼悪)、素早さが高いポケモンも採用されやすい。
オニゴーリ:単体
チラチーノの前に、まずはタイトルにもある仮想敵のオニゴーリについて簡単に説明したい。
とはいえオニゴーリ単体の紹介に多くのスペースを割く訳にもいかないので、基本戦術であるムラっけ+まもみがを全く知らない方はまずこちらの育成論を参照して欲しい。
さいくさん:ムラっとはじまる鬼神仮面劇場(育成論ORAS・XY/1237)
オニゴーリは通常のシングルバトルにおいても、ランダムに能力が上下する特性「ムラっけ」、無効耐性の無い一撃技「絶対零度」を持ち、存在自体が運ゲーの極致としてある意味有名なポケモンである。
ただしひと口に運ゲーと言っても、オニゴーリはターンを稼ぐだけでランダムながら自己強化が出来る。
オニゴーリより遅く音技連続技持ちでないポケモンは総じて起点にされてしまうことから、鈍足、特に受けポケモンに対して選出段階から強い圧力を掛けることが出来る。
シーズン10現在、オニゴーリはスペシャルレート(さかさバトル)の使用率上位に居続けている。
この育成論はオニゴーリ入りパーティへのメタを目的としているが、その特徴ゆえにオニゴーリを完全に対策することは不可能であることは頭の隅に置いておいて欲しい。
オニゴーリ:構築
オニゴーリ単体で見た場合、対策する(起点にさせない)ことはそれほど難しくない。ただ、起点作り役の存在がオニゴーリの対策を困難にしている。
その起点作り役として有名なのがボルトロスとジャローダである。
- ボルトロス
悪戯心により電磁波を始めとした変化技を先制で打つことができる。
様々な型が存在するが、通常シングルにてオニゴーリと組む場合は害悪積みサイクルと呼ばれるボルト+メタモン+オニゴーリ+ピクシーetcの並びが多い。
(電磁波+威張るのコンボにより場を荒らした挙句、突破されても麻痺+混乱した相手をコピーしたり後続の積みの起点にする)
さかさバトルでは電磁波が地面タイプに通ることから、起点作り性能がさらに向上している。
- ジャローダ
地面タイプに通る麻痺付与技である蛇睨みを扱うポケモンの中で最も素早い(S113)。両壁・ミラーコート・挑発・光合成なども扱うことができ非常に器用なのが特徴。持ち物候補も襷、ゴツメ、ラム、粘土など多岐に渡る。
天邪鬼+リーフストームにより抜き性能も高く、特にさかさバトルでは草タイプの一貫性向上によりワンウエポンでもエース運用が可能。
幅広い型と単体性能の高さ故に構築を問わず入りやすく、さかさバトルにおいては非常に高い使用率を誇る。
オニゴーリに対し、後出しからの対策では少なくとも2ターン以上の猶予を与えてしまう。
ムラっけや絶対零度の試行回数がそのまま負け筋に繋がるため対面から素早く処理したい所だが、その為にはボルトロス・ジャローダに起点を作らせずに突破する(流す)必要がある。
チラチーノの特徴
前置きが非常に長くなったが、ここでチラチーノの特徴を対オニゴーリ入りという目的に合わせて紹介する。
- 特性:スキルリンク
2〜5hitの連続技が必ず5hitする特性。チラチーノよりはパルシェンとメガヘラクロスの代名詞。
身代わりを破壊しながら本体も攻撃出来るため、みがまもでのターン稼ぎを許さない。
種族値とタイプの関係で火力はメガガルーラ・メガヘラクロス・パルシェン等に及ぶべくも無いが、それでもH177-B102オニゴーリに対しA147スイープビンタが食べ残し2回込みで確定2と、最低限の遂行火力は確保できている。
- 素早さ種族値115
チラチーノはボルトロス(S111)・ジャローダ(S113)よりも素早さが高い。
先に行動出来るということは、それだけで相手の妨害を受けにくいということに繋がる。
残念ながら挑発は覚えないが。
- 技:タネマシンガン
草タイプ技ひとつでボルトロス・ジャローダに抜群が取れることから、両者に対応しながらも技スペースに余裕が出来る。
また非接触かつ連続技のため、ゴツゴツメット・気合の襷・リンドの実に縛られない。
- 非メガシンカ
メガシンカ枠を消費しない、持ち物をメガストーンに縛られない、という2つの利点がある。
特定のメタでメガシンカを消費してしまうことは構築・選出を大きく歪ませ、またラムを持たない場合はメタモン入りに対して電磁波+威張るの展開を常にケアする必要がある。
- 対メタモン性能
自身で運用する際にも注意すべきことだが、スイープビンタが5連接触技であることからゴツゴツメット・鮫肌による処理が容易。
対メガガルーラと同様の処理ルートを適用出来ることから、ボルトゴーリ+メタモンorガルーラのような選出想定に対してこちらの選出を歪ませる必要が無い。
耐久が低めなのでファイアローの珠ブレイブバード、メガガルーラの猫騙し+不意打ちといった汎用性のある先制技によって処理することも可能。
これらの特徴から、チラチーノがボルトロス・ジャローダ+オニゴーリ(+メタモン)の処理に長けていることを理解して頂けると思う。
構成
- 特性
スキルリンク
- 持ち物
ラムの実
ボルトロスには必ず上から電磁波を打たれてしまうため、一度だけ麻痺を防げるラムの実を採用する。
ラムを持つことで、ジャローダとの対面でリーフストームと蛇睨みによってタネマシンガンと身代わりの択が発生することも防げる。
パーティで対ボルトロスを考える必要が無ければ拘り鉢巻を持たせることで後発からジャロストッパーの役割も持てるようになるが、当育成論のコンセプトから外れるため考慮しない。
- 性格・努力値
対オニゴーリ入りという役割から、必要な性格補正と努力値配分について考察する。
まず素早さ。少なくとも最速ジャローダ抜きのS補正有り244振りまでは確定。特殊技を使用しないため、性格はC下降補正の陽気とする。
次に攻撃だが、オニゴーリへのスイープビンタのダメージ量、特に身代わりの確定数を考えるとA全振りとせざるを得ない。残り12はどこに振っても大きな変化は無いため、特に指定しない。
以上の内容から、配分の最低ラインは以下の通り。
性格:陽気(S+、C-)
実数値:150-147-80-x-80-182
努力値:0-252-0-0-0-244
確定欄では、残り12はまず同族やS-1で準速70族と同速勝負出来る最速として、残り4をDL対策のためDに振っている。
(A200テクニガッサの封じ+マッパは高乱数耐え)
- 技構成
スイープビンタ/タネマシンガン/身代わり/(選択技)
まず攻撃技として、オニゴーリ・ボルトロス・ジャローダへの最大打点であるスイープビンタ・タネマシンガンを採用。
次に状態異常・メタモン対策として身代わりを採用。
身代わりはジャローダの上から貼ることができ、ラムと併せボルトロスの電磁波を透かすこともできるため非常に有用。
相手に見せる前ならば、オニゴーリ(やゲンガー)との対面で初手守るに合わせるだけでアドを取ることもできる。
残りの1枠は選択技となる。候補に挙がるのはアンコール・威張る・電磁波・毒々・ロックブラストなど。
アンコール
タネマシンガン一発で突破出来ず、電磁波を貰ってしまうオボンボルトを無理矢理流すことが可能。
対オニゴーリにおいてはいたずらにターンを稼がせる結果になりやすく特に必要ない。
威張る
起点役の次に出てきたアタッカーや受けに当てる。スカーフメタモンと組む場合の選択肢。
メガガルーラはA+2不意打ちでメタモンが縛られるため安易に威張ってはいけない。
電磁波・毒々
オニゴーリに対して上から当ててしまえばほぼ機能停止に持ち込めるため、ジャローダのリフレクターやムラっけのB上昇による負け筋を軽減することが可能。
毒々はチラチーノに出てきやすいゴツメ持ちの物理受けによく刺さる。
ロックブラスト
アタッカーとしての攻撃範囲を広げられる。特にゴツメ持ちのカバルドン・ガブリアスに有効。
確定欄は、仮想敵のオニゴーリと繰り出されやすい受けポケモンの両方に刺さる毒々を採用している。
立ち回り
- ボルトロス
初手は身代わりから入る。
状態異常をラムで透かしながら貼ることが出来るため、相手の変化技(挑発除く)・交換に対してアドバンテージが取れる。
ボルトチェンジの場合は不利対面を作られ厳しくなるが、幸い採用率は低い。
オボン持ちに対してはタネマシンガンが確定2となるため、初手で身代わりが残せても電磁波を入れられてしまう。それが嫌ならばアンコールで流すしかない。
対オボンボルト性能の低さがラムチラチーノ最大の弱点。
- A147(252)タネマシンガン
H154-B90 → 32〜38(20.7%〜24.6%) 確定1
H186(252)-B134(252+) → 22〜28(11.8%〜15%) オボン込み確定2
- C177(252)10万ボルト
H150-D80 → 112〜133(74.6%〜88.6%)
- ジャローダ
初手はタネマシンガンから入る。身代わりから入ると、リーフストームを選択された場合に止まらない。
耐久無振りなら低乱数1、B252振りリフレクター持ちでも確定2なので、リーフストーム・リフレクター・蛇睨み・威張るなど全ての行動に対応できる。
命の珠持ちはC252珠リーフストームが高乱数1〜確定1と突破を許すが、タネマシンガン+珠ダメージにより高確率で相討ちにできる。
(拘り眼鏡、奇跡の種、緑のプレート持ちは個体数が非常に少ないため考慮しない)
相手が初手蛇睨みとした場合、次ターンには捨て覚悟の蛇睨み、あるいは交換が予想出来るため、身代わりが安定する。
- A147(252)タネマシンガン
H150-B115 → 26〜32(17.3%〜21.3%) 低乱数1(31%)
H151(4)-B147(252) → 22〜26(14.5%〜17.2%) 確定2
- C95リーフストーム
H150-D80 → 87〜103(58%〜68.6%)
- C127(252)リーフストーム(珠)
H150-D80 → 152〜179(101.3%〜119.3%)
- オニゴーリ
こちらの行動は状況によるが、オニゴーリ側はほぼ100%守るから入ってくるため、身代わりを見せていなければ積極的に使用したい。
チラチーノがオニゴーリに突破された場合でも、ムラっけの試行回数を与え過ぎない限り身代わりを残されることは稀。
万全を期すのであれば、早い特殊打点のポケモンを置いておくと全抜きされるリスクは下がる。
例としてはスカーフメタモン。回避>命中となっていたり、守るでSが逆転されない限り安定したダメージを与えられ、オニゴーリが選出されずとも腐らない。
- A147(252)スイープビンタ
H177(172)-B102(12) → 21〜25(11.8%〜14.1%) 食べ残し2回込み確定2
- C105(36)氷の息吹 ※急所ダメージ
H150-D80 → 67〜81(44.6%〜54%) 乱数2発 (40%)
比較・差別化
オニゴーリ対策として名の挙がりそうなポケモンを羅列してみる。
- 連続技
メガガルーラ、メガヘラクロス、パルシェン、キノガッサ、マンムー
- 音技
ポリゴンZ(騒ぐ)、ウルガモス
- 特性
メガフーディン(トレース)、クロバット(すり抜け、必中毒々)
- その他
ゲッコウガ(毒菱、必中毒々)
まず、メガシンカしているポケモンはラムを持てないことから電磁波+威張るの起点になりやすく、コピーから全抜きされる危険性が高い。
メタモン入りに対するリスクだけでなく、選出自由度も考えれば差別化は出来ている。
次に、S80未満のポケモンはオニゴーリに上を取られている点から絶対零度により突破されるリスクが高まる。
チラチーノはオニゴーリの上から身代わりを貼ることで、零度による被突破リスクを最小限に抑えることが出来る。
これに当てはまらないポケモンのうち、マンムー、ポリゴンZ、ウルガモス、クロバットに関しては対ボルトロス・ジャローダの性能から差別化出来る。
最後に、ゲッコウガは毒菱を踏ませることで安定した処理が可能だが、主な処理方法が毒・猛毒であることから遂行速度の面で差別化出来る。
先にも述べたが、結局のところオニゴーリ入りに対して完璧な対策など存在しない。
チラチーノを含め、オニゴーリ対策たり得る各ポケモンの長所・短所を加味し自身のパーティと相談して欲しい。
チラチーノの長所
起点役に強い点、メガ枠を消費しない点、メタモンに全抜きさせにくい点
チラチーノの短所
遂行技が低命中である点、汎用性が低い点
選出例
実際のオニゴーリ入り選出例に対し、こちらの必要選出について考える。
(起点役=ボルトロス・ジャローダ)
- 起点役+オニゴーリ+メタモン
チラチーノ+ゴツメ枠+@1
チラチーノ+先制技持ち+@1
- 起点役+オニゴーリ+メガガルーラ
チラチーノ+ゴツメ枠+@1
- 起点役+オニゴーリ+その他メガ
チラチーノ+メタモン+@1
基本的にはメガ枠を含まない2枚でオニゴーリ入りに対応できることから、表裏の両選出に対応できる場合は多い。
またジャローダ・カイリュー・ラティオス・キノガッサといった後続で受けにくい高KPポケモンに対面から勝てるため、刺さっているパーティに対して先発で投げやすい。
構築
相性の良い味方として実際に使用していた並びを紹介する。
- メタモン@拘りスカーフ
さかさバトルでは攻撃技の一貫性が向上するため拘るデメリットが小さく、同タイプに抜群を取れることが多いためスカーフが非常に有用。
相手のメガシンカやジャローダをコピー出来れば全抜きも狙いやすい。
- ガブリアス@ゴツゴツメット
メガガルーラへの強力なコマ。接触技に投げるだけで大きな負荷を与えられる。
オニゴーリよりも素早い点も特徴で、対クレセリア・ポリゴン2に毒々を搭載すると、オニゴーリにも上から打てる。
チラチーノにロックブラストを採用するとメタモンに突破されやすくなる点に注意したい。
総括
チラチーノは元よりオニゴーリに対して相性が良く、さかさルールにより対ジャローダ、ラムを持つことで対ボルトロスの性能が向上し、取り巻きまで含めた対応が取りやすくなっている。
ただしラムの実自体が汎用性の高いアイテムではないことから、火力アップアイテム・王者の印・気合の襷などを持たせる場合と比べタイマン性能がかなり下がっている点は留意しておきたい。
とはいえ、さかさ環境は通常シングルより受け攻めの2極化が激しく、火力を強化したところで役割範囲はさほど広がらない。印は結局運次第、襷もゴツメとガルーラが跋扈しているため腐りやすい。
もともとチラチーノはアタッカーとしてほぼメガガルーラの劣化であることから、個性を活かすにはこのような特定のメタという形を取るのが無難だと思われる。