- 全編において常体を用い、また敬称を略す。
最初に
- 多少調べれば分かる程度の略称、用語を用いる。また、性格補正あり252振りを「特化」、性格補正なし252振りを「ぶっぱ」と呼称する。
- ダメ計についてはトレーナー天国のツールを使用した。
お断り
本育成論で考察するワタッコの型は、ポケモン実況者・バニラビンズの動画を参考に考察したものとなっている。この場を借りて断りを入れると共に、届くかは不明だが氏に対して感謝の意を示させて頂く。
ちからをすいとるとワタッコ
「ちからをすいとる」(以下、ちかすいと略す)という技をご存知だろうか。簡単に説明すると、相手の攻撃のランク補正込みの実数値分体力を回復し、更に相手の攻撃を1段階下げる補助技である。USM現在、最終進化系ではマシェードマシェード・ラフレシアラフレシア・キレイハナキレイハナ・ウツボットウツボット・ワタッコワタッコが修得可能である。あとドーブル回復兼デバフということで非常に優秀な技なのだが、如何せん修得者が揃いに揃ってマイナー寄りなため知名度が低い。
5体の内ワタッコは、S種族値110(修得者中ぶっちぎりのトップ)、特性すり抜け、アンコールを修得可能と、なかなかどうして物理アタッカーをハメるのに向いた能力を持っている。中でもSについては、ちかすい持ちで唯一特性抜きで特化ミミッキュを抜くことが可能。……もうお分かり頂けるだろう。ワタッコはUSMからミミッキュをハメ倒すことが出来るようになったのである。例えメンヘラ型であっても、である。
今回の型は、ちかすいとアンコールを生かして、主に相手の物理(積み)アタッカー・耐久型を受け、流していく型となる。
差別化
他のちかすい修得者との差別化点は前述した通りだが、同じ要素で他のポケモンとの差別化も可能となる。
通常、回復とデバフ(又は自らへのバフ)を1体で行うには技スペを2枠割く必要がある。そこから更にアンコール等のハメ技・毒々等のダメージソース・守るや身代わり等の自己防衛手段の3つを1度に採用するのは不可能であり、どれかを切らざるを得ない。しかし、ちかすいならば回復とデバフを1枠で完結させることが可能となるため、3つとも採用可能となる。無論、そんなことが出来る技はちかすいの他にない。技スペの節約はちかすいの大きな利点の1つと言えよう。
鬼火ならばダメージソース兼デバフで同じように技スペ圧縮も可能である。鬼火・アンコール・回復技(眠るを除く)・身代わりの全てを両立できるポケモンにはサーナイト(願い事)サーナイトとゴウカザル(怠ける)ゴウカザルがいる。……この2体ならば別に差別化は要らないだろう。
性格・努力値
今回の型において肝となるのはSラインである。まず、最大の役割対象であるミミッキュを確実に抜くため、性格補正あり148振り(又はSぶっぱ)は確定。よって、自動的に性格は臆病で確定となる。
ここからどこまで振るかは使用者がワタッコにどこまで求めるかによる。参考までに、S調整ラインを以下に記す。尚、全て性格補正ありである。
ワタッコ252振り 最速カミツルギ抜きカミツルギ
ワタッコ220振り 最速メガカイロス抜きメガカイロス
ワタッコ196振り 最速ガブリアス抜きガブリアス
ワタッコ180振り 最速100属抜きメガリザードンXメガガルーラマッスグマ
ワタッコ164振り 準速メガルカリオ抜きメガルカリオ
ワタッコ148振り 最速ミミッキュ抜きミミッキュ
残った努力値は、可能な限りHBに割くことになる。以下で調整例を紹介する。
- H76B236S196
確定欄の調整である。
Sを最速ガブ抜きとし、マゴの実の発動を容易にするH実数値4n(16n)調整、余りを全てBに回した。こうすることで、最速襷ガブのステロ/剣舞を対面からキャッチしたり、地震読み後だしから捕まえたりできる。最速100属を抜いているのも大きく、メガガルを上からちかすい連打で骨抜きにしたり、悠長に剣舞を積んできたリザXをハメる(勿論竜舞だと面倒なことになるが)なんてことも可能である。
- H108B252S148
Sは最速ミミッキュ抜きに留め、H実数値4n調整かつHB最硬調整を施したものである。これだとミミッキュの特化Zシャドクロ+影打ちまでは確定で耐えられるため、そこからハメることが可能となる。因みに特化ぽかぼかフレンドタイムも耐えることは可能だが、そこから影打ちを耐えられない。
尚、この調整は参考動画の調整とほぼ同じである。
この2つの調整はどちらもBから8だけHに回しても特に確定数は変わらない。食べ残し採用の場合はそうしてH実数値16n+1ないしは4n+1にした方が良いだろう。
特性
すり抜けで確定。相手の身代わりを無視して行動できるのは非常に大きく、ワタッコの強みの1つでもあるこの特性を切ることはできない。
リーフガードも面白い特性ではあるのだが、わざわざ日本晴れを採用するスペースがあるかと言われると微妙な上、やったとしてもターン数制限があるため使いにくい。葉緑素はこの型では論外である。
持ち物
以下に候補を列挙する。尚、確定欄にはマゴの実を据える。
- マゴの実
不意の大ダメージからのリカバリー能力に長ける。前述したぽかぼか確定耐え調整においては、ミミッキュに後出しした際にぽかぼかを打たれても、木の実発動からハメ体制を整えるという荒業が可能となる。無論、単純に身代わりの施行回数稼ぎにも有用である。因みにマゴの実なのは臆病な性格のポケモンは甘い木の実が好きだからである。
- 食べ残し
毎ターンの安定した回復手段として優秀。16n+1調整にすれば食べ残しの回復効率も上がる他、身代わりの体力確保にも繋がる。
- クサZ/ドクZ
ちかすい/どくどくをZ技化することでB1段階上昇効果を得られる。他2つよりも多少強引に動くことが可能となるため、Z枠があまっている場合は一考の価値あり。
技構成
コンセプトの力を吸い取る(ネマシュ系統から遺伝)、ハメ戦術を取るにあたり必須のアンコール(ピッピ系統、トゲチック系統等から遺伝)、相手の補助技透かしやZ透かしに有用な身代わり(技マシン)は確定。今のままではただの相手の攻撃をいなし続けるだけで突破力0のポケモンになってしまうため、ラスト1枠はダメージソースとなる技となる。
以下、候補技を列挙する。
- 毒々
鉄板のダメージソース。交代されても効力を発揮するのが大きく、遂行速度は候補技中トップである。役割対象が引いた先のポケモンに負荷をかけるにはこれが一番である。環境に多い鋼タイプに無効化されるのが面倒なところ。技マシン。
- まとわりつく
相手の交代を封じた上で定数ダメージを与え続ける。ハメ倒すという観点では非常に優秀な技である他、他の候補技では倒せないカミツルギとナットレイを倒す唯一の手段である。毒無効手段の多い耐久型に対しては毒々よりこちらの方が有用。一定ターンで解除されてしまうのが難点。技マシン。
- 宿り木の種
自らの回復も兼ねられる他、交代した際味方にも恩恵があるのが有難い。仮にマジックミラー等で跳ね返されても自分には無効である。命中不安な点、草タイプや草食持ちに無効化されるのが難点。レベル技。
確定欄には毒々を据えるが、どれも一長一短のため好きなものを選ぶと良い。因みにギガドレイン・エナジーボールはタイプ一致とはいえ草タイプ最終進化系ワースト3位、しかも無補正無振りのCではクソみたいな威力しか出ないため候補外となる(ギガドレに至っては耐久無振り非ハードロックドサイドンにすら中乱数で耐えられる)。
運用
まず留意すべき点として、ワタッコ自身の素の耐久はそう高くない。耐久振りのため不一致2倍弱点ならなんとか耐えてくれるが、4倍弱点・一致2倍弱点・不一致弱点Z等は基本耐えないと思って差し支えない。出来るだけ攻撃をモロに食らわないようにしたいところである。
基本的には、自身よりも遅い物理アタッカー・耐久型が役割対象となる。繰り出した後、まず様子見のため身代わりから入るのが得策。補助技が来たならアンコールで縛り、攻撃技が来たならちかすいで火力を削ぎつつ受けていく。頃合いを見てダメージソースを入れていきたいところである。もし途中で交代されても、ちかすいを打っていたターンなら体力が回復できるし、ダメージ技を入れた時なら相手にそれ相応の負荷がかかる。相手を存分に引っ掻き回していこう。
注意点として、積み技を強要していない場合、同じ相手に対しては1回目より2回目、2回目より3回目の方がちかすいの回復量が少なくなる。これは「相手のランク補正込みの」A実数値分体力を回復するという仕様上、毎回相手のAにデバフをかけるちかすいには仕方のないことである。ある程度吸いとって出涸らしになった後は、味方の積みの機転にしたりするのもまた1つのやり方だろう。
相性のいいポケモン
- マンタインマンタイン
参考動画内で使用されていた組み合わせ、通称ワタマンタ(命名:バニラビンズ)。ウツロイドのぶっぱパワージェムをH244振りだけで5〜6割程に留める脅威の特殊耐久を誇り、かつ弱点のうち氷と炎を等倍以下に抑えられる。マンタイン自身が低火力故積みの機転になりやすいものの、そこをワタッコでアンコールすることも可能。食べ残しの競合、岩と電気の一環は気になるところ。
あとワタッコとマンタインが並んでいるとなんか和む。ワタッコマンタイン
- ドリュウズドリュウズ
毒・岩・飛行・電気に耐性があり、耐性込みでそれなりの耐久があるためある程度受け回しも効く。ちかすいで骨抜きになった相手の前に出て剣の舞ができるとまたよい。但し今度は炎の一環がある。
- ヒードランヒードラン
ワタッコの弱点はヒードランが岩以外半減以下、ヒードランの弱点はワタッコが全て半減以下と、相性補完良好。どくまも型にして徹底的に相手をハメるのもまた一興である。しかしバシャを呼ぶ。
特殊耐久が高い代わりに物理耐久に不安の残る積みエースの1例。バンギに関しては弱点のうち3つをワタッコが半減可能なためそこも悪くない。バンギだと鋼に薄く、ガモスだと岩が一環するのが難点。あとけたぐり搭載のミズZゲッコとか来たらお察し
筆者もまだまだ開拓中のため、コメント等での提案があると非常に助かる。文章量と相談しながら追記していく。
被ダメ計
攻撃技はそうとはとても言えないようなダメージにしかならないまとわりつくしかないため、今回は被ダメのみ。確定欄の調整で計算している。
- 物理
ミミッキュの特化じゃれつくミミッキュ
41.6%〜49% 確定3発
上同特化ぽかぼかフレンドタイムミミッキュ
87.5%〜103.1% 乱数1発(18.8%)
上同特化A6段階上昇影打ちミミッキュ
73.2%〜87.5% 確定2発
マンムーのぶっぱ氷の礫マンムー
84.4%〜104.3% 乱数1発 (6.3%)
メガガルーラの特化捨て身タックルメガガルーラ
68.9%〜81.9%+16.7%〜20.4% 乱数1発(6.25%)
霊獣ランドロスのぶっぱストーンエッジランドロス(霊獣)
77%〜91.9% 確定2発
ガブリアスの特化逆鱗ガブリアス
70.8%〜83.8% 確定2発
カミツルギのぶっぱスマートホーンカミツルギ
48.4%〜57.7% 乱数2発(92.6%)
- 特殊
霊獣ボルトロスのぶっぱめざ氷ボルトロス(霊獣)
96.8%〜116.7% 乱数1発(81.3%)
ポリゴン2の無振り冷凍ビームポリゴン2
94.4%〜111.8% 乱数1発(56.3%)
ウツロイドのぶっぱパワージェムウツロイド
86.9%〜104.3% 乱数1発 (25%)
クレセリアの無振り冷凍ビームクレセリア
69.5%〜84.4% 確定2発
メガルカリオのぶっぱラスターカノンメガルカリオ
63.3%〜74.5% 確定2発
編集後記
年明けから少々時間が経ったものの、2018年1発目の育成論となった。如何だっただろうか。
対戦実況動画は考察対象の宝庫である。動画を見ていて使ってみたい型を見掛ける、というのは誰しもあるのではないだろうか。動画や構築記事・育成論・ネット上の対戦相手から発想を得て、そこから自分なりの考察を加えてそのポケモンを己のものとする、というのは対戦で上を目指す際には重要なことだと筆者は考える。筆者が過去に執筆した育成論で言えば、ゴチルアント論(育成論サンムーン/739、育成論サンムーン/740)とジメンZテッカニン論(育成論サンムーン/1122)が、外部から着想を得て作り上げた論である。ぜひ読者諸君にも、この論に限らず色々な論を見る際にはただ完全コピーするだけではなく、自分なりの形にアレンジすることを試してみて貰いたい。某狩猟ゲーム風に言うなれば、「己の型を、見つけ出せ。」といったところか。
ところで、ワタッコの綿毛部分をもふもふしてみたいと思うのは筆者だけだろうか。
参考動画
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バニラビンズのポケモン『今作ではミミッキュはワタッコに勝てません。【ポケモンUSUM】』2017/11/21公開
同チャンネル『「ちからをすいとる」がズルすぎてヤバいです【ポケモンUSUM】』2017/11/22公開
同チャンネル『環境トップに強い組み合わせ『ワタマンタ』って知ってる?』2017/11/25公開